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上見屋の歴史

上見屋は創業以来六代にわたり、
当地で旅館を営んでおります。
付知は中山道と飛騨とをつなぐ中間地。
かつては御嶽山登拝の入り口で、多くの
旅人や文人墨客にご利用いただきました。
現在は、旬の食材を生かした料理と、
築百五十年以上の木造建築が醸し出す
時の流れをお楽しみいただける割烹旅館
として、みなさまのおくつろぎの時を
演出いたします。

料理人 早川 篤志

【 経歴 】

昭和 54年 付知町に生まれる。
小さな頃から、板前である実父や叔父そして祖母が、実家上見屋の厨房で腕を振るうのを身近に見て育つ。
平成10年 地元の商業高校を卒業後、料理の世界へ入る。
料理の修行先である静岡県伊東市の純和風高級旅館にて生涯の師匠である岩佐博美氏に出逢い師事、薫陶を受ける。
約10年間、各地で日本料理の下積みをして腕を磨き実家に戻る。
平成25年 日本料理とこわか をオープン
平成27年 株式会社 上見屋 代表取締役就任


【 資格 】

岐阜県知事認定 ぎふの味 伝承名人
岐阜県調理師連合会認定 岐阜の料理師範
日本ソムリエ協会認定 ソムリエ (J.S.A21377)

上見屋の看板

街道に面した正面玄関には、人間国宝の黒田辰秋先生がお作りになった「屋見上」と書かれた看板がかかっています。
黒田先生は、映画監督の黒澤明先生の依頼により、付知で椅子の作成をします。その時に半年ほど当旅館にお泊りになりました。
この看板は、黒田先生が「宿泊のお礼に」と作ってくださったものです。文字の外側は線彫り、内側は線彫りの底から盛り上がるように削られており、とても手の込んだ作品です。力強く、美しい看板は、当旅館の顔として今も大切に使わせていただいています。
付知町は東濃桧の産地で、よく手入れされた山々に囲まれている里山です。
付知の美しい自然と、創業以来のたたずまいを今に伝える木造建築の当旅館は、伊集院静さん、立松和平さんはじめ、多くの著名人の方々にご愛顧いただいております。

創業明治八年

付知の老舗割烹旅館上見屋は、明治8(1875)年に旅籠として創業しました。旅籠とは、街道筋で旅人を泊まらせた食事付きの宿のことです。付知川左岸の川東と呼ばれるエリアに「上見」を屋号とする家があり、初代はそこの出身との事。旧飛騨街道沿いで木造3階建ての旅籠を始め、当初は上見楼と呼ばれていました。
創業当時は、製糸工場で働く女工さんや親方衆の定宿としても使われていたと言います。長野県の岡谷から飛騨高山へ向かう道中の、ちょうど最後の宿場が付知でした。また御嶽山に向かう登山客の宿や、富山の薬売りなどの商人宿としても使われました。
大正期から昭和初期にかけては、向かい側の敷地で精肉店も営んでいたとか。旧街道に面した部屋を、寿司屋やカフェ、飲み屋にしていた時期もありました。また昭和46(1971)年には、南隣の敷地に結婚式場として別館を建てています。かつては多くの旅人が泊まった上見屋も、本館は少人数の寄り合いに、別館は大人数の冠婚葬祭にと、次第に地域の方々が集まる場所へと変わってきました。

上見屋のリノベーション

リニューアルにあたり、上見屋の「地元の食材を使い、その食材の味を最大限活かし、ここにしかない料理に仕上げる」
この精神を建築空間に込めるべきではないかと考えました。

空間を考える時の「地元の食材」とは、この場所にしかない、山であり、青空であり、太陽の光であり、吹き抜ける風であり、湧き出る水であり、食材を育む環境そのものではないかと思います。

その環境を最大限活かし、美しく切り取り、感じられる空間とすること。
それが上見屋の精神を体現する方法になると思っています。

このコンセプトを基に、長い歴史をもつ上見屋が2022(令和4)年のリニューアルによって、また新たな姿へと変わろうとしています。これまでは割烹旅館上見屋という名前でしたが、これからは日本料理上見屋に。一日一組限定、完全予約制という形で宿泊機能を残しつつも、日本料理店としての営業がメインになります。山菜やきのこ、鮎、鰻、猪、雉など、付知ならではの田舎懐石を提供します。

上見屋の建物は、街道沿いから奥へと、徐々に増築をしていったという歴史があります。一番手前の部分が明治8(1875)年に、真ん中が大正時代までに、そして一番奥の座敷が昭和8(1933)年に建てられました。昭和8年には、手前部分の3階建から2階建への減築も行われています。
今回のリニューアルでは、居住スペースや調理場等のバックヤードとして使われてきた真ん中部分を、全面的に建て替えました。客室として使われてきた趣ある奥座敷はそのまま残し、田舎懐石を楽しむ部屋となります。一方で街道沿いの一部はリノベーションを行い、カフェを併設する付知地域デザインミュージアムとして生まれ変わりました。